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アジア転職支援情報

現在の世界から見る経営者の戦略立案が必要  石倉洋子慶応義塾大学教授

 2012年夏、日本企業を取り巻く環境にも、日本を代表する企業の業績にも、明るい兆しが見えない。円高や高い法人税、エネルギー問題など日本企業は六重苦にあえいでいるといわれる。抜本的な解決策が依然見えないユーロ問題、雇用創出に陰りが見え始めた米国、成長の鈍化が目立つアジア諸国なども世界経済に暗い影を落としている。
 しかし日本企業にはプラスの外的要素や、これまで培ってきた資産もある。今なお世界経済の成長エンジンがアジア市場であることや、アジアやアフリカを含むBOP(ベース・オブ・ピラミッド)市場のポテンシャル(潜在能力)が巨大であることは間違いない。金融資産もIT(情報技術)リテラシーもあり自分の生活へのこだわりが強い団塊の世代を筆頭に、日本のシニア層が世界の消費市場をリードするという期待も大きい。
 さらに、エネルギーや環境に開する日本企業の技術力は健在だ。日本製品はアジア市場で高いブランドカかおる。コンビニエンスストアやユニクロ、無印良品などのブランドで展開するサービス業のノウハウも世界で通用する。
 では、これだけ可能性がある市場が存在し、攻略のための潜在力かおるにもかかわらず、なぜ日本企業の力が世界に示されないのだろうか。筆者は、「つながり(Connect)」と「断絶(Divide)」という2つの動きが世界に共存していることへの日本企業の認識不足が原因だと考える。
 インターネットなど情報通信技術の急速な進歩で、世界がつながりつつあることは明らかだ。容易に世界情勢が「見える化」されていることも、一般の人々に世界のつながりを実感させる。その一方で、世代間をはじめとする各種の断絶が生じている。つまり、世界はつながりつつあると同時に、これまで意識されなかった断絶が進みつつある。
 しかし日本企業には、つながりを再構築しようとする意識や活動が見られない。例えば、BOP市場への進出が叫ばれている割には、日本にある本社とBOP市場のつながりは希薄で、土地勘の不足からBOP市場への事業展開は遅れがちだ。20年近く前の自社の華々しいブランドカの記憶しかないトップと、仕事を始めてから自社のブランド力を実感したことのない若い世代との認識のギャップや断絶も大きく、話が通じない。世界の多様性への対応もスローガンにとどまっており、国籍、性別、経歴などの違う人とどうつながればよいのか、実践の経験も実感もない。
 また、日本企業は今なお日本人の新卒採用が中心だが、企業が求める知識・スキルと大学教育が提供するものは大きく食い違っている。こうした課題は日本企業だけの問題ではない。必要なスキルを持つ人が見つからない「人と仕事」の断絶、企業が必要とする知識やスキルが既存の教育機関では提供されないという「雇用と教育」の断絶、そしてリーダーの育成をはじめとする人材の問題は、世界でも金融危機以上に深刻な問題とみられている。
 グローバル人材というと、日本企業ではある種のスキルを持つ日本人を育成する取り組みと考えられ、1980年代からこうした活動が繰り返されてきた。しかし世界で事業展開する企業では、本社社員の派進にとどまらず、これまで土地動のなかった地域市場で価値を提供できる戦略をどのように立案・実行するか、そのためのグローバルノウハウをどう開発・蓄積するかを重視するようになった。
 例を挙げよう。韓国サムスン電子では、海外経験が昇進の要件になっている。数年間新興経済地域で暮らし、現地の生活習慣を熟知する社員が多数育っている。加えて1年以下の短期赴任や海外のマネジャーが本社で2年過ごすプログラムも実施されている。その結果、グローバルマネジャーは01年の800人から12年には3千人に増え、内訳も韓国人とそれ以外が半々だ。
 米ウォルマート・ストアーズは08年から、インド、ブラジルなど急速な成長が見込まれるBOP市場で、州政府などと連携し、人□の多数を占める若い世代のためにスキル開発プログラムを実施している。自社の採用人員の育成に加え、各国市場に合った形で商品やサービスを提供する狙いだ。BOP市場の問題をチームで解決する「アクションラーニング」や短期のインターン制度により、米国の同社社員がなるべく早く海外市場の現状を体感できるようにするための仕組みもある。
 日本企業にも「世界と本社」のつながりを強化している事例はある。コマツはずっと以前からグローバル人材を地道に育成している。同社トップは「世界から日本を見られる人材がコマツの将来を決める」と明言している。フアーストリテイリングなどは世界から優れた人材を積極的に採用、開発しようとしている。
 団塊の世代の退職と、若い世代に雇用・昇進の機会が開かれていないという問題も解決が急がれる課題だ。60~70年代に欧米市場を開拓すべく苦労を重ね、日本製品のイメージを一変させた団塊以上の世代の持つ知恵と経験が伝承されなければ、日本企業の大きな損失となる。また、オンラインや交流サイト(SNS)が生活に根づいている若い世代のITスキルや、世界のスピードに対応可能な感度を生かさなければ、企業はグローバル競争に勝ち残れない。
 これらの世代間の断絶を解消し、両世代をつなぐには、10年以上前に米ゼネラル・エ
レクトリック(GE)のウェルチ氏が提唱・実践し、米シスコシステムズなどが採用している「リバースメンタリング」が有効だ。これは、若い世代が上の世代に学ぶ通常のメンター制度ではなく、上の世代が若い世代に学ぶという逆方向のメンタリングだ。日本では、これを双方向にして、知識や知恵の共有を通じて新商品への開発に結びつけられる可能性がある。
 この取り組みをさらに進めれば、BOP市場と日本、世代や性別の断絶を解消する動きに発展させられよう。例えば、GEは世界各地の女性幹部社員をつなげ、経験や知恵を共有するネットワークを構築している。世界的な課題に取り組んだ経験を持つ若い世代を積極的に採用する日本企業が増えることが望まれる。
 次に、変化が加速する中で「人と仕事」 「教育と雇用」の深刻な断絶に対し、成長分野の企業が広範囲に進める各種組織(業界、政府などの公的機関、大学、起業家など)をつなぐ活動を紹介する。
 インド・ソフトウエア・サービス協会(NASSCOM)は、オンラインで教育プログラムを提供し、業界共通の資格となる修了証を授与している。業界全体の競争力や人材の流動性を高める取り組みだ。インドではインフォシスやウィプロなど個々の企業も各種のスキル開発プログラムを提供している。カナダ・トロントの金融サービス連携(TFSA)も金融サービス業界での同様の取り組みだ。
 シスコシステムズは、スキルを持つ人員の不足に悩むフィリピンの大口顧客に、特定スキル開発のための集中プログラムを提供している。それまで同社が世界で実施してきたオンライン教育プログラムの経験を生かし、教育と雇用、人と仕事を結びつけるだけでなく、新興同市場での顧客ニーズに応えた。一見ビジネスに直接結びつかないと思われる活動が、新興国市場で新しい価値を提供する好例だ。
 これらの事例から考えると、日本企業に必要なのは、過去の姿でなく「2012年の世界」の現状を熟知するトップが、自社の戦略の実践にスキル、知識、人材がどれだけ必要なのかを見極めて、的確な対策を打ち出すことだ。グローバル競争を前提に世界各国の企業が試行錯誤する中で、日本発・日本中心ではなく、世界をフィールドとして組織や国を超えたつながりをデザインする必要があろう。

2012.09.04

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