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金融人材転職市場2008

金融人材転職市場2008

昨年夏以降、サブプライムローンという怪物が世界中を席捲し、それが単に金融業界のみならず、世界経済に大きな影響を与えている。人間の叡智の産物が人間社会の安定を脅かしている。
オカネが正常に流れず、それがヒトの雇用削減につながり、景気の変動が人々の生活を不安に陥れる。株式市場のオカネは穀物、原油など資源への投機に流れ、カタストロフィーへと向かうリスクが増えていく。カオスは世の中の常だが、人間の叡智で少しでも混沌から安定へと近づける一歩を踏み出したいものだ。
昨年来の金融業界の現状とそれに伴う雇用情勢を探ってみた。

  1. 欧米金融機関の現状

    1.欧米金融機関、損失24兆円 サブプライム関連 シティなど主要22社
    信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に端を発した世界的な信用収縮が、欧米金融機関の経営を揺るがしている。昨年7月から今年3月末の9ヶ月間で、欧米の主要金融機関22社が計上した関連損失は、2千3百20億ドル(約24兆円)に達した。混乱は幅広い金融商品に広がっており、損失がさらに拡大する可能性もある。
    国際通貨基金(IMF)は、4月サブプライムローン関連の世界の金融機関の損失が9千4百50億ドルに上ると推計しており、今後も損失が膨らむ可能性があると報じている。
    巨額の損失を受け、財務基盤強化のために増資に踏み切る金融機関も多い。UBSは4月に百50億ドル増資すると発表。ワコビアが70億ドル、リーマンブラザーズが40億ドルの増資を実施しており、JPモルガンも優先株発行の淳部を進めている模様だ。
    英銀RBSが大規模な増資、総額百億ドル(2兆円強)に上るとの見方もある。世界的な金融不安に伴う損失を早めに処理するため自己資本の増強が必要と判断した。

    2.欧米銀、追加損失広がる ドイツ銀は4000億円
    米国のサブプライムローン問題に伴う欧米主要銀の損失計上が止まらない。スイスのUBSに続き、ドイツ銀行も1−3月期に25億ユーロ(約4千億円)の追加損失を計上。UBSのマルセル・オスペル会長は引責辞任に追い込まれた。サブプライムローンを裏づけとする証券だけでなく、比較的信用力の高い住宅ローンなどにも損失が拡がり、金融不安が長引く公算が大きい。
    スイスの金融大手UBS1−3月期決算は、最終損益が1百15億スイスフラン(約1兆1500億円)の赤字だった。前年同期は30億スイスフランの黒字。米国のサブプライムローン問題に絡み1百90億ドル(約2兆円)の損失を計上した。来年半ばまでに米英の投資銀行部門を中心に約84000人いる社員の7%に当たる5500人を削減する。1−3月期の損失額は、2・4半期連続で1兆円を超す最終赤字を計上した。主な内訳はサブプライム関連の投資評価額引き下げで73億ドル。信用度の高いプライムと信用度の低いサブプライムの中間である「オルトA」関連証券で61億ドル、米モノライン関連で17億ドルなど。投資銀行部門の税引き前損益は182億スイスフランの赤字となった。
    スイス大手銀のクレディ・スイスも1―3月期決算は、最終損益が21億4800万スイスフラン(約2200億円)の赤字に転落した。前年同期は27億スイスフランの黒字だったが、サブプライムローン問題による金融市場の混乱に絡んで、53億スイスフランの関連損失を計上した。
    3月に四半期決算を発表した米大手証券も追加損失を相次ぎ計上した。ゴールドマン・サックスが20億ドル、リーマンブラザーズが18億ドルなど、これまでサブプライム問題の影響が少なかった企業も損失に見舞われた。ドイツ銀と同様に、レバレッジドローンやオルトAなどの周辺分野での損失が主体だった。4月中旬移行はシティグループなど米銀大手も1−3月期決算を発表する。米証券オッペンハイマーは「シティが1−3月期に131億ドルの評価損を計上する可能性がある」と試算。JPモルガン・チェースもメリルリンチの業績予想を引き下げた。
    米メリル1−3月期決算は、19億ドルの赤字(前年同期は20億3千万ドルの黒字)となった。信用力の低いサブプライムローン問題に端を発した信用収縮に関連した約66億ドルの損失を計上した。昨年からの累計損失が320億ドルを超え、米金融金機関では大手銀シティグループに次ぐ規模に膨らんでいた。これまでに1100人の人員を削減していたが、損失拡大に伴い4千人を追加する。引き続き、不採算な不動産関連や自己投資事業を中心にリストラを進めるとみられる。メリルは、社債と優先株発行で約95億ドル(9800億円)を調達することが発表された。
    米大手銀シティグループの1−3月期決算は最終損益が51億1千百万ドル(約5千3百億円)の赤字(前年同期は50億1千2百万ドルの黒字)になった。サブプライムローン問題の深刻化に伴い、信用収縮に関連してこの1年で百60億ドル(約1兆6千億円)の損失を計上し、昨年からの合計損失額は欧米金融機関の中で最大となる約4百60億ドルに達した。業績悪化を受け、9千人規模の人員削減を実施する。損失の主な中身は貸し倒れ引当金積み増し、住宅担保ローンの証券化商品やLBO融資での評価損。住宅担保ローンや個人向け融資の延滞率上昇が響いた。金利や手数料収入の合計である純収入はほぼ半減した。M&Aや証券化ビジネスの不振で、市場・投資銀行部門は人件費などのコストを吸収できずマイナスになった。ただ、世界的な支店増加が奏功して、個人向け金融サービスは増収だった。
    米大手銀のバンク・オブ・アメリカの1−3月期決算は純利益が12億1千万ドルと前年同期比77%減少した。サブプライムローン問題の深刻化に伴い、信用収縮に関連した損失が約67億ドル発生した。
    昨年後半以降、シティやメリルリンチ、UBSは相次ぎ中東やアジアの政府系ファンドなどから資本参加を受け入れたが、政府系ファンドも追加出資に慎重な姿勢を見せ始めている。追加損失が拡大した金融システム不安がさらに高まれば、再度の資本増強や公的資金の注入を求める議論が本格化しそうだ。

    3.欧米22金融、増資22兆円 昨年下半期以降。資本の欠損を補う
    米シティグループなど欧米の主要金融機関が普通株や優先株の発行などを通じて財務体質の改善を急いでいる。サブプライムローン問題の深刻化に伴う自己資本の欠損分を補う狙いがある。昨年下半期から発表した増資額は主要22社の合計で12百億ドル(約12兆4千億円)程度に達し、同期間に計上した関連損失額(約2600億ドル)の半分弱を埋める形となった。
    損失計上は住宅担保ローンからLBO融資など様々なローン債権に広がっているだけに、今後も積極的に増資に踏み切る可能性が高い。自己資本の不足は信用不安につながるうえ、日米欧の金融当局で構成する金融安定化フォーラム(FSF)が4月発表した報告書でも早期の自己資本拡充を求めている。
    米シティグループはこのほど60億ドルの優先株を発行する方針を明らかにした。増資の合計額は290億ドル。シティは460億円の損失を計上しており、増資で経営の安定を示す中核的な自己資本比率(Tier1)を引き上げる。
    米JPモルガン・チェースは60億ドルの優先株発行を決めた。同行は6月末までに経営危機にあった米証券大手ベアー・スターンズを買収する予定。買収に伴う資産拡大に先回りする形で自己資本を増強し、格下げなど資金調達力の悪化を防ぐ。米メリルリンチも25億5千万ドルの優先株発行を決定。増資は3回目で、昨年からの合計額は約150億ドルとなった。
    欧州勢でもスイスのUBSが株主総会で150億ドルの増資を決議した。増資は昨年来2回目で、調達額は合計約250億ドル。これまで約370億ドルのサブプライムローン債権や証券化商品の評価損を計上しており、財務体質の改善を急ぐ。
    英RBSも164億ドルの損失計上に対応して、このほど240億ドルの新株発行予約権発行を決めた。
    これまでの増資で目立つのは、自己資本規制にさらされている銀行勢。ただ今後は証券会社の増資も増えそうだ。ベアー・スターンズの経営危機を通じて、証券会社が破綻するような事態になれば金融システム全体のリスクにつながることが明らかになったためだ。
    米政府は証券会社の流動性確保を監視し始めており、年末にかけて証券会社の経営の安定性を示す財務指標の情報開示を強化するとみられる。

    4.米シティ、41兆円資産売却。総資産の2割3年以内に、世界で事業再編
    米金融最大手シティグループは、今後2,3年かけて4千億ドル(約41兆円)超の非中核事業の資産を売却する方針だ。っサブプライムローン問題の打撃を受け、世界規模で事業再編を進める。コスト削減とともに不採算事業を整理し、収益力を高める。個人・法人向けを中心とする総合金融機関は維持しつつ、経営再建を目指す。
    圧縮対象になる非中核資産は、同グループの総資産2兆2千億ドルの約2割に相当する5千億ドル。これを2,3年後に千億ドル以下に減らす方針だ。不採算の資産や事業の内訳は住宅ローン関連や証券化商品が半分以上にのぼる。部門別では個人向け金融部門が6割、証券・市場部門が3割を占めている。具体的な売却対象を明らかにしていないが、米国のほか日本やドイツ、メキシコなどの事業が対象で、日本の消費者金融事業も含まれるとの見方も出ている。今後、各国の金融業界で大きな影響が出るものとみられる。
    シティはすでにダイナース・カードなどのカード事業やリース事業の一部を売却、日興アセットマネジメントの上場計画も進めている。今回更に時行の選別の進め、資産圧縮を本格化する。売却は段階的に実施する見通しで、最終的には数年かかるとみられる。
    中核事業であるリテールや投資銀行業務以外が売却の対象になる見込み。600億ドルに上る経費の約2割も削減する。
    シティはサブプライム問題が響き、今年1−3月期までの2・4半期連続で赤字となった。9%の増収、ROE16−18%を目標に悪化した財務体質の早期改善を目指す。
    シティは日興コーディアルグループを傘下に収めるなど買収戦略を進め、世界最大規模の総合金融グループとなった。だが、サブプライム問題で最も痛手を被り、株価はピーク時の半値以下に下落した。
    ヘッジファンドへの資金46%減
    1−3月期の世界のヘッジファンドへの資金流入額は前期と比べて46%少ない165億ドル(約1兆7千億円)にとどまった。前期比の減少は07年4−6月期以降四・四半期連続。減少幅は拡大を続けている。金融市場の混乱を受けて運用成績が悪化したファンドが多かったことを反映した。

    5.JPモルガンへ身売り、ベアー決定。銀行・証券が一体化。リストラ・海外事業課題
    経営難に陥った米証券大手ベアー・スターンズは、米大手銀行のJPモルガン・チェースへの身売りを決める。銀行業務が米銀3位のJPモルガンはベアーが得意としていたファンド業務を取り込み、念願だった投資銀行・市場取引部門のフルライン化を実現する。ただ、両社の企業文化は大きく異なり、リストラや成長分野である海外事業のてこ入れなど課題も多い。
    ベアーはサブプライムローンに端を発した信用不安で経営危機に陥り、3月にJPモルガンが救済合併することが決まった。JPモルガンが今後強化するのが、成長著しいヘッジファンドの証券市場にけるメーンバンク的な役割を果たす「プライム・ブローカレッジ」事業だ。売買取次ぎから証券を担保とした資金融資までを手がけ、ベアーは全米トップクラスの実績を誇る。
    JPモルガンは1万4千人いるベアー社員の45%に相当する約6千3百人を雇用する予定だが、大半が同事業の担当者とされる。ベアー買収により、JPモルガンは年10億ドルの利益押し上げ効果を期待する。
    ベアー買収に合わせて、JPモルガンは自社のリストラにも取り組む。5月下旬、中間管理職を中心にリストラ人事を発表した。削減数は2千人程度とされ、縮小部門は債券取引、M&A向け融資など足元の採算が悪化している分野となった模様だ。
    ただ、新しい分野に積極的に取り組んできたベアーと、保守的なJPモルガンには社風に大きな違いがある。JPモルガンはウォール街の名門。一方のベアーはリスク志向が強い社風で、「貧しく」(POOR)ても「賢く」(SMART)て「やる気」(DESIRE)があれば雇用すると言い、「PSD」との異名をウォール街で得ていた。
    ベアーによって投資銀行業務のフルライン化が完了するが、ベアーの商圏はあくまでも米国が中心。海外事業ではシティグループなどに後れを取っており、今後は新興国などでの事業拡大も課題となりそうだ。

  2. 日系金融機関の現状

    1.六メガ邦銀、4割超す減益 サブプライム損失7千―8千億円
    大手銀行グループの08年3月期決算は合計の連結純利益が1兆5千億円規模と、前年比4割超の大幅減益になった模様だ。純利益は3年ぶりに低水準。サブプライム関連の損失が7千億―8千億円に達し、貸し出しなどの本業も低迷した。06年3月期の過去最高益から、2期連続の減益に落ち込む。
    大手6グループは三菱東京UFJ、みずほ、三井住友、りそな、住友信託、中央三井トラスト。08年3月期の当初は合計で2兆5千億円強の連結純利益を想定。07年3月期の2兆8千億円強には及ばないものの、高水準の業績を見込んでいた。だが昨年夏以降、米国のサブプライムローン問題の影響が日本の金融機関にも広がり、各行は昨年11月以降、業績見通しの下方修正を重ねた。今年1月時点での純利益の予想は6グループ合計で2兆円強だったが、期末にかけても金融市場の混乱が続き、損失は更に拡がったと見られる。
    みずほフィナンシャルグループは傘下のみずほ証券を中心に4千億円を超えるサブプライム関連損失が発生した模様で純利益は直近の会社予想である4800億円を下回る公算が大きい。
    三菱UFJと三井住友でも、それぞれが直近に予想した6千億円、5千億円の達成は難しい。前の期に比べて横ばいを見込む三井住友を除く5グループは大幅減益が確実となっている。
    邦銀は巨額の不良債権処理を終えて財務体質を改善し、金融市場の混乱による悪影響は米欧銀に比べて小さいとされてきた。だがサブプライム問題は邦銀のとっても明らかに重荷になっている。実体経済の減速も加わり、今期も厳しい収益環境に直面している。

    2.三メガ邦銀、G7監視対象に、サブプライム 邦銀の損失一段と
    米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)関連の損失が邦銀でも一段と広がってきた。みずほフィナンシャルグループ(FG)は、08年3月期の関連損失が5,650億円に拡大。成長分野と見込んだ投資銀行業務で逆に損失が膨らんだ。G7財務相。中央銀行総裁会議で合意する世界の主要銀への共同監視の対象に3メガバンクが含まれる。邦銀経営は当面サブプライムに揺さぶられそうだ。
    三菱UFJ,三井住友両グループの前期業績も下ぶれするリスクがある。
    欧米では通期ベースで一兆円を超すサブプライム関連損失を出す金融機関が7グループある。みずほの損失はこれより小さいが、JPモルガン・チェースを上回り、欧米並みに近づいてきた。
    日米欧など主要国金融当局は市場の混乱を抑えるため世界の主要銀を共同監視しうることで合意。G7会議で了承する金融安定化フォーラムの提言に盛った。メガバンクは共同監視されるが、欧米勢のような資本増強に追われていない。1990年代からの金融危機を乗り越え、体力が回復した。なお年数千億円の利益を上げ、自社株買いや増配に取り組む余裕もある。巨額赤字に転落したみずほグループ傘下のみずほ証券は、同じみずほ系の新光証券との合併延期を重ねている。
    2006年に公的資金を完済した各メガバンクは成長戦略の柱として証券など投資銀行業務と海外市場開拓を掲げた。米国での金融持ち株会社の資格を取ったみずほは海外戦略で邦銀の先頭を走ってきた。国内金融機関で突出したサブプライム損失はこうした積極策の裏返しでもある。

    世界の主要金融機関のサブプライム損失(08年4月18日時点)

    シティグループ 460億ドル
    スイスUBS 380億ドル
    米メリルリンチ 320億ドル
    英HSBC 180億ドル
    米AIG 178億ドル
    米モルガン・スタンレー 140億ドル
    米JPモルガン・チェース 107億ドル
    バンク・オブ・アメリカ 105億ドル
    米ワコビア 90億ドル
    みずほ 60億ドル
    ドイツ銀行 60億ドル

    3.M&A、資金難で低迷続く。円高、海外企業買収の好機(レコフ今井社長)
    米住宅ローン問題に端を発する市場の混乱で、世界のM&A件数が減っている。07年度の日本企業がかかわったM&A総額も、06年度比で3割弱減少した。
    世界のM&A市場で今起きていることは、市場がどんなに悪くても、内部成長で足りない分をM&Aで補おうとする企業のニーズは根強い。問題はそこに資金が付かないことだ。投資銀行(証券会社)は在庫の有価証券を担保にするレポ取引で短期資金を調達するが、レポ市場の崩壊で、担保証券がトリプルA格でも資金がとれなくなった。この結果、M&Aに必要なブリッジ・ファイナンス(つなぎ融資)に資金が回らなくなっている。クレジット市場は格付けや債務保証といった虚像で成り立っている部分が剥げ落ち、市場全体が連鎖的におかしくなっており、銀行も資金が出せない。
    したがって借り入れを多用しレバレッジをかけて買収する投資ファンドのような金融投資家は余計厳しくなっている。
    日本企業のM&Aの見通しは、日本企業にとってピンチは勝機でもある。円高と海外の株安は裏を返せば、海外企業を買収する好機となる。しかも邦銀は米欧の金融機関と比べ米住宅ローン問題の影響が小さいから、企業は買収資金を調達しやすい。企業はいまこそ大局観を持って戦略を練り、リスクを取るべき。
    日本企業同士も、飽和状態にある流通業などで効率を上げるためにM&Aが必要になってくるだろう。労働集約型のソフトウェアや人材派遣業界、乱立気味の学習塾なども再編が起こらざるを得ない。
    政府が英投資ファンドにJパワー株の買い増し中止を勧告した。この意味は国益に沿わない動きへの介入はどの国もあるが、問題はその程度だ。過剰におびえ防衛する必要はない。鎖国的な発想はできるだけ避けないと、自由市場の否定につながる。買収者が国益に反したら事後的に介入すればいい。外為法の外資規制という伝家の宝刀は、抜かないからこそ伝家の宝刀なのだ。
    ファンドのM&A件数最高
    日本でも買収ファンドによるM&Aが増えている。07年は86件成立。06年から10件増え、過去最高を更新した。中堅企業でも事業再編などにファンドを活用するケースが広がっている。06年には、すかいらーくや旧東芝セラミックスなど大型のM&A賀相次ぎ成立。投資金額は合計で9235億円と03年を抜いて最高になった。3百億円未満の中小型案件が大半で、合計金額は06年の実績に及ばなかった。欧米では米国のサブプライムローン問題の余波で、ファンドによるM&Aが大幅に減少している。一方、国内では08年に入っても、アドバンテッジパートナーズによる東京スター銀行の買収など2千億円超の案件が相次いでいる。欧米に比べて買収に必要な融資が受けやすいことも後押ししているようだ。

    4.証券化商品 発行3割減 大手銀案件が一巡
    住宅ローン債権などを担保に発行する「証券化商品」の発行額が、07年度に前の年度より約3割減り、日本でも4年ぶりに減少した。民間金融機関の住宅ローン担保証券(RMBS)が急減したほか、大型案件がなくなった反動が出た。米住宅ローン問題の余波で、特に仕組みの複雑な金融商品の発行がしにくくなっている。金融機関や企業の資金調達にも影響が出てきそうだ。
    昨年度の証券化商品の発行額は7兆8千億円。前の年度より約3割減少し普通社債の発行額を4年ぶりに下回った。最大の証券化商品であるRMBSが3兆2千億円と約2兆円減少したことが大きい。三菱東京UFJ銀行などのメガバンクが、公的資金を完済、証券化に伴う利益計上を目的とする発行の一巡などが要因とみられる。年明けから米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題のあおりで、債務担保証券(CDO)に代表される、仕組みの複雑な金融商品の購入を投資家が控えた。CDOの発行額は20%減の3300億円となった。
    一方商業用不動産ローンを担保にした証券(CMBS)は34%増の約2兆2千億円。不動産取引の拡大に加え、米サブプライム問題の深刻化で外資系証券会社が手許にあるローンの証券化を急いだためと見られる。
    今年1−3月でみると証券化の先進国である米国の発行額が約8割減っているのに対し、日本は25%減。日本には米国のような無理な証券化商品は少ないとの声もある。
    08年度についてはCMBSやRMBSの発行が伸び悩みそう。CDOなども、みずほ証券などが大幅な損失を計上したこともあり逆風下。証券化商品の発行環境は一段と厳しくなりそうだ。

    5.REIT物件売却加速 昨年度倍増88件に 資金調達の環境悪化
    不動産投資信託(REIT)の間で保有不動産を売却する動きが広がっている。07年度の売却件数は88件と06年度から倍増した。世界的な信用収縮で資金調達が難しくなる中、投資家への分配金の原資を確保するために不動産の売却や入れ替えを進めているためだ。物件取得件数も2年連続で減少し、拡大を続けてきたREIT市場は曲がり角を迎えている。07年度の売却件数は01年の市場創設から6年間の累計を上回った。前の年度にあった大型物件の売却が07年度はなかったため、売却額は29%減の1450億円だった。米国のサブプライムローン問題の影響もあって物件売却の傾向は年明け以降加速、07年度下期は件数が前年同期の2.4倍、金額は4割増だった。
    REITの多くは昨年からの相場低迷で増資による資金調達が困難になっており、金融機関も不動産の融資先を選別している。新規の資金調達で物件数を増やしづらく、金利負担増も収益を押し下げる。手持ちの物件を売却しても優良物件を代わりに購入できる保証はないため賃料収入が先細りする懸念もある。
    一方、07年度の物件取得件数は14%減の436件、取得学派10%減の約1兆6千百億円。資金力に勝る大手REITの一部は資産規模を拡大しているが、相場低迷が続けば今年度はさらに減る公算がある。

    6.三菱UFJ証券 最終利益9割減 市場混乱で前期損失拡大
    三菱UFJ証券は08年度3月期決算の連結最終利益は60億円程度と前の期から9割近く減った模様。単体の採取損益では40億円程度の赤字に転落したと見られる。サブプライムローン問題に端を発した金融市場の混乱で、トレーディング損失が拡大したのが主因だ。
    同社はサブプライム証券化商品を保有していないが、金融市場の混乱でデリバティブ取引や債券のトレーディングなどの損失が拡大。株式委託手数料も減り、単体ベースでは05年の発足以来初めて、前身の三菱証券から通算すると5期ぶりの赤字になったようだ。
    大和證券グループ本社の連結最終利益は前の期に比べ約5割減に留まる見込み。三菱UFJ証券の落ち込みが大きいのは、ここ数年で急拡大した陣容に収益力が追いついていない面もあるためとみられる。今後、経営陣がいかに立て直すか、手腕が問われそうだ。

    7.野村證券 9期ぶり最終赤字 前期サブプライム響き678億円
    野村ホールディングスの08年3月期決算は、最終損益が678億円の赤字(前の期は1758億円の黒字)となった。サブプライムローンに端を発した信用収縮に関連して、期中に合計約2600億円の損失が発生。9期ぶりに最終赤字に転落した。世界的な市場混乱が国内大手金融機関の業績を直撃している。野村は07年4−10月期までに住宅ローン担保証券(RMBS)の売却損などで約1100億円の損失を計上していたが、08年1−3月期に約1500億円の追加損失を計上した。米国の商業用不動産ローンを担保にした証券(CMBS)の評価損約200億円のほか、欧米の金融保証会社(モノライン)の取引に関連し約1300億円の損失引当金を計上した。これは野村が前期に計上したサブプライム関連損失のほぼ半分。経営状態が悪化したモノラインから、野村が将来受け取る保証額が減ると判断した。損失リスクに前倒しで対処し、今後の収益の急回復を狙う足場を固める。
    投資銀行部門は企業の株式公開や公募増資の減少で16%減収。新興国株ファンドなど投資信託販売は好調だったが、全体の収入は1兆5900億円と前の期から22%減少。信用収縮に伴う損失計上を補えなかった。

    8.野村、内部管理に抜け穴 インサイダーで社員逮捕 中枢から情報流出
    野村證券社員がインサイダー取引による金融商品取引法違反で逮捕。中国人社員は企業情報部在席時にM&Aなどの内部情報を次々と入手し、知人と協力して不正な株売買を繰り返していた。市場の担い手の不正だけに内部管理体制の強化が課題になりそうだ。監視委によると、逮捕された中国人ら3人がインサイダー取引をした疑いのあるのは計21銘柄に上る。いずれも企業情報部が扱ったM&AやTOBの内部情報を社員が入手。公表前に知人に伝えて売買して、濡れ手に粟の利益を得たとされる。
    株式市場の担い手による不正行為が相次いでいる。3月に新日本監査法人の公認会計士が担当していた複数の企業の株式を売買し、業務停止命令を受けたばかりだった。今回のケースも個人の犯行とはいえ、内部管理体制に抜け穴があった。企業文化の変質が遠因との指摘もある。1990年代後半以降の金融危機を克服し、この2,3年で日本の証券会社や大手銀行は拡大路線に転換した。野村證券もその例外ではなく、アジア市場などに業務を広げてきた。人材も、中途採用やアジア諸国・地域の現地採用を増やした。事件の舞台となった企業情報部だけで外国籍の社員が7人に膨らんでいる。
    金融庁・証券取引等監視委員会は1990年代から不良債権処理が一段落したことを受け、金融行政の軸足を銀行などの経営健全性維持から、透明で公正な市場形成に移してきた。監視委は抗した観点から不正取引への監視を強化しているが、「発覚した事案は氷山の一角」との見方も多い。政府は世界での東京市場の競争力強化を掲げ、今通常国会に金融商品取引法改正案を提出している。市場インフラの担い手の不正が相次ぐ中、こうした構想は絵に描いたもちになりかねないとの懸念が出ている。

    9.前期のサブプライム損失 みずほ証券・野村、6700億円
    サブプライムローン問題に端を発した世界的な市場の混乱が国内証券会社の業績を直撃している。主要5グループの08年3月期決算によると、サブプライム関連損失はみずほ証券と野村だけで計6730億円を計上。直接影響を受けていない他社も金融商品の価格下落などで大幅な減益になった。みずほ証券は新光証券との合併を1年後に延期。証券経営にも影響を与えている。
    みずほ証券は103月期に、証券化商品の評価損などでサブプライム関連の追加損失を1860億円計上。通期では関連損失を4130億円出した。この結果、最終損益は4130億円の赤字となり、前の期の2600億円の黒字から6期ぶりに赤字に転落した。野村ホールディングスも前期に2600億円の関連損失を計上。9期ぶりの赤字になった。
    サブプライム損失を計上していない他の主要証券も、市場の混乱に伴ってトレーディング部門といわれる市場での証券売買の収益が悪化した。大和証券グループ本社は債券取引などで損失が出て前期の債券・為替関連の収益が1千億円と前の期と比べて3割ほど減った。日興コーディアル証券と日興シティグループ証券の2社は株安の影響で株式関連が振るわず、単純合算で約1億円の損失となった。

    10.ヘッジファンド苦戦 日本対象の昨年度 残高1兆2千億円減
    株式を中心に日本の資産に投資するヘッジファンドが苦戦している。07年度の運用成績は年度ベースで過去最悪を大幅に更新した。成績悪化を嫌気した顧客の解約もかさみ、年度末の運用資産は1年前に比べ約1兆2千億円減った模様だ。足元では資産流出に歯止めが掛かりつつあるが、本格的な資金流入に転じるには運用成績の安定が条件になる。
    投資対象の約9割が株式で、割安株を買い、割高株を空売りする「ロング・ショート」と呼ばれる運用方式が大半を占める。07年度の運用成績はマイナス8.6%となり、00年度以降で最悪だった。サブプライムローン問題の深刻化で、年度後半に株式相場が急落したことが響いた。サブプライムローン問題に余波で投資家のリスク回避姿勢も強まり、解約も相次いだ。ファンドに資金を貸し付けていた金融機関の資金引き上げも起きたようだ。
    この結果、07年度末の運用資産は226億5千万ドルと1年前に比べ107億6千万ドル減った。減少は2年連続だが、減少額は06年度の比べ1.5倍に膨らんだ。安定運用志向が強い国内の年金基金はまだ日本株のヘッジファンド投資に及び腰だが、運用成績がプラス基調になれば再び投資に動く可能性もある。

  3. 欧米金融機関の雇用情勢

    1.リストラの嵐、業界問わず ウォール街、予備軍20万人
    ニューヨーク州マンハッタン地区ハーレムの職業紹介所。同州が運営、求人や職業訓練の情報を提供している。パソコンを使って求職サイトで金融関係の働き口を探していた求職者は、昨年12月管理部門のアシスタント職として2年間勤めた米銀大手JPモルガン・チェースから解雇された。
    信用力の低い個人向け住宅融資問題が深刻になった昨年7月以来、シティグループ、メリルリンチなど米金融大手は業績不振を理由に大規模リストラに動いている。
    JPモルガンは3月、経営危機に陥った証券会社ベアー・スターンズの買収を決めた。ベアー社員は1万4千人いるが、JPモルガンと事業が重複する部門を中心に両社で1万3千人が失職する見通し。
    2007年の金融部門の人員削減数は15万人強。半数は住宅ローン関連とされる。今年は20万人超の追加削減が見込まれ、ウォール街は解雇予備軍で溢れかえる。
    ニューヨーク州のパトリシア・スミス労働長官によると、この1年で失業保険の申請者は約1割増えた。保険期間は26週間だが、期限切れ後も失業中の割合が35%に上る。同長官は「ニューヨークは一大金融サービス拠点。打撃は最も大きい」と語る。人員削減は金融部門に限らない。数年前まで営業部門の定職にあった41歳男性は、現在レンタルDVDショップの契約社員。最近は期間限定で退屈な低賃金の職しか見つからない。37歳男性は、昨年末、接客係として2何件勤めた携帯電話会社を解雇された。2年契約は当初からの約束。求人募集中の企業に片っ端から電話をかけているが、営業職はみつからないという。
    米労働省によると、3月の非農業部門の雇用者数は前月比8万人減。減少は3ヶ月連続となる。「住宅価格下落と雇用者数の減少を見る限り、米国はもう景気後退期に入った」。元米通商代表部(USTR)代表はこう断言する。

    2.米金融、人員削減一段と。今年4月末解雇者、5万人規模に。9割が住宅ローン会社
    米金融機関が辞任削減を一段と進めている。今年に入って4月末までの解雇者数は約5万人に達し、15万人が失職した昨年とほぼ同じペースで削減が続いている。住宅市場の減速が長引き、住宅ローンを業務の柱とする中小金融機関などの苦境が深刻化しているためだ。金融業界では最終的な人員削減数が昨年を上回る30万人に達するとの見方も出ている。
    金融業の人員削減は05年、06年と約5万人だったが、サブプライムローン問題が表面化した昨年は15万人に急増した。
    今年はこのうち9割近くを住宅ローン会社の人員削減が占める。昨年は5割強だったが、住宅販売の低迷が予想を超えて長期化する中で、主に中小のローン会社が負担に耐え切れなくなっている。住宅ローンが業務の中心となっている地方銀行も既に3行が破綻するなど経営が厳しい。
    大手金融機関でも証券大手ベアー・スターンズを買収したJPモルガン・チェースが、ベアー従業員の55%に当たる7600人余りを解雇することを明らかにした。
    大手銀シティグループは4月に9千人の追加削減策を発表。昨年からの削減数は1万3千人に上る。パンディットCEOは大幅な越す津削減を目指しており、最終的には37万人の全従業員の1割程度まで削減が進むとの観測がある。
    大手証券モルガン・スタンレーも6月までに1500人を減らし、全従業員の1割に当たる4500人の削減を完了する見通し。スイス金融大手UBSもNYやロンドンの投資銀行部門を中心に、全従業員の7%に当たる5500人を減らす計画を発表した。
    CDOなど仕組みの複雑な金融商品の発行は急減しており、ピーク時の市場規模を回復することは難しい。証券会社の稼ぎ頭である市場部門でもこうした分野の人材の削減が進んでいる。
    一部の大手証券では解雇された人材がヘッジファンドなどに転職する例もあるが、地域金融機関では再就職も難しい。記入期間の人員削減は米国の失業率が3,4月と2ヶ月連続で大台の5%を上回る中で、雇用情勢を一段と悪化させる可能性がある。
    ただ、米企業は日本や欧州企業に比べて早いタイミングで人員削減を進め、負担を最小限にとどめようとする傾向がある。早期に業績を回復し、再び採用を拡大することで、結果的には景気の立ち直りを早めるとの見方もある。

  4. 日系金融機関の雇用情勢

    1.みずほ銀行、相談員5千人に倍増 個人向け強化、500店目指す(みずほ銀 杉山頭取)
    08年目標は、みずほ銀を「最強のリテールバンク」にするのが経営ビジョン。みずほファイナンシャルグループは大企業営業を中心としたみずほコーポレート銀行と、みずほ銀の二行体制をとっている。みずほ銀はリテールの特化していく。個人向けビジネス強化の具体策は、預金や投資信託、保険など多様なニーズを持つ顧客への相談業務に一段と力を入れる。ファイナンシャルコンサルタント(FC)と呼ぶ専門の相談員の数を、現在の約2千5百人からまず3千―4千人、できたら数年で5千人へ倍増したい。
    いまは約420の店舗数も増やしたい。個人特化型の店舗も含めて、500店を目指す。FC5千人・5百店舗体制になれば、各店舗にFCが10人ずついる計算になる。法令順守体制の充実にもつながる。
    個人マネーをめぐる競争は激しさを増すばかりだ。他の大手銀行もリテール強化をほぼ一様に掲げ、外資系金融機関の攻勢や異業種からの参入も目立つ。人員数や店舗網での優位をどう生かすのか。大企業との取引はグループ内のみずほコーポ銀に任せる独特の形態を活かす戦術も問われる。

    2.三井住友銀、派遣2千人正社員化発表。即戦力 女性に照準
    大手銀行の人材確保競争が一段と熱を帯びてきた。投資信託など取り扱う商品が増えるとともに、金融商品取引法の施行により顧客への説明に時間をかけるようになったため、各行とも営業現場は人手不足状態。新卒・中途の採用には限界もあり、女性を中心とした即戦力の囲い込みに躍起になっている。
    三井住友銀行は営業店に勤務する派遣社員2千人を正社員に雇用すると正式発表した。今年7月付けで大幅な人事制度改革に踏み切る。補助的な業務を担う「一般職」も廃止し、一般職の5千5百人に営業や管理職への道を開く。
    同行の人事改革の狙いは女性の活用。日本の労働力人口は今後、減少が予想され、女性が働きやすい職場作りが人材確保のカギを握る。
    銀行界を取り巻く短期的な事情も背景にある。「現場は慢性的な人手不足」。ある大手行の支店長はため息をつく。各行は個人向け業務をこれからの収益源と位置づけ、競争も激しい。正社員の採用を抑えてきた結果、ただでさえ人手が足りないのに、金商法施行で投信などリスク商品の説明に割く時間や労力が増えている。三井住友銀の改革は、銀行業務に精通した女性従業員を個人向け営業に振り向ける戦術でもある。
    女性の活用は銀行界共通の経営課題だ。りそなホールディングスは会長や社外取締役が中心となって、女性の活用策を拡充している。04年7月に総合職と一般職の区分を廃止。05年にはパートから正社員に登用する制度を設けた。パートにはボーナスも支給している。「顧客の半分を占める醸成のセンスを活用しなければ飛躍できない」(細谷会長)
    全行員の45%を女性が占める新生銀行。00年の発足時に総合職と一般職の区別を廃止した。窓口業務を担う女性行員もマネジャーや店長になれる。
    いま、女性を戦力として活用できるかどうかが、競争力を左右する。

    3.買収融資 相次ぐ体制強化、人材の争奪、激しく
    買収融資の成長を見込んで、陣容を拡大する金融機関が目立つ。「今後の体制整備」を聞いたところ、買収融資の専門部署を持つ金融機関23社のうち12社が「増資など体制強化を予定している」と答えた。
    大手邦銀は買収融資を法人向け業務の新たな収益源と位置づける。90年代半ばから日本で買収融資に乗り出しているみずほコーポレート銀行(CB)は国内に40人、海外に110人いる人員をさらに増やす方針だ。三井住友銀行や三菱東京UFJ銀行も中途採用を含め幅広く人材を増やす計画。
    外資系証券も相次ぎ体制を強化。昨春以降、JPモルガン証券やUBS証券などが新たに専門チームを設置。国内勢に比べて人数は少ないが、海外の幅広いネットワークや、融資と資本の中間資金であるメザニンをワンストップで提供するサービスで攻勢をかける。昨年後半以降に成立した日本の大型案件では、外資系証券が買収融資を取りまとめる例が多かった。
    この分野での人材の異動は活発だ。みずほCBで買収融資を手がけていた笹山嗣氏は06年にメザニンの専門会社を始動。外資系を中心に経験者の争奪が激しくなっているほか、「融資の基本となる企業価値分析ができる若手が足りない」(外国証券)との声も出ている。

    4.みずほ証券が人員15%削減 金融大手で初、サブプライム響く
    みずほ証券は、4月28日従業員の15%を柱としたリストラ策を発表した。役員報酬も削減する。08年3月期に連結最終損益が4186億円の赤字(前の期は269億円の黒字)に転落したのに伴う措置。サブプライムローン問題による経営悪化で、国内主要金融機関が辞任削減に乗りだすのは初めて。
    人員削減は主に希望退職の募集で進める。同証券が募るのは初めてで、現時点では本体に在籍する約1850人を対象に09年3月期中に実施し、1550人程度まで約300人減らす。145ある部署も、半分程度まで削減する。
    また経営責任を明確にするため4月から半年、役員の報酬削減も実施。同社長は30%削減。大幅損失を計上する舞台となったロンドン現地法人については証券化商品組成業務を一時縮小し、人員を100人程度削減した。

  5. 外資系・日系金融人材の需給状況

    1. 投資銀行ビジネス:外資系インベストメント・バンキング部門は、グローバルレベルの大型M&A案件の低迷から、当該求人案件の動きは極めて鈍い。とりわけ、外資系金融機関の投資銀行ビジネスの実績のあるプロフェッショナルは、極めて限られているので外資系からのスカウトはよほどの処遇を提示しないと難しい。そこで日系メガバンクからの採用にも目が行くが、邦銀・大手証券ではグローバルでかつクロスオーバーした業務経験を有する有資格者は殆ど見あたらないので、これも難しい。
    2. 買収・投資ファンド:米国に端を発したサブプライムローン問題の世界的な波及の影響から外資系金融機関の不動産投資、不動産のノンリコース・ローンが落ち込んでいる。外資系ファンドによるM&A,投資案件も同様に低迷している。したがってこれらのビジネス分野の人材需要は弱い。ただし日系金融機関によるM&Aや不動産のノンリコース・ローンは、それほど落ち込んでいないので、これらの日系金融機関の当該業務の求人案件はそれほど落ち込んでいない。
    3. ヘッジファンド:ヘッジファンドのパフォーマンスは当然のことながら個別にバラツキがあるが、特にファンド・オブ・ファンズは相対的にパフォーマンスが良いので、当該ファンドの求人が見られる。
    4. 資産運用ビジネス:資産運用会社の人材需要が相変わらず強含みである。現在引き合いのあるポジションは従来のファンドマネジャーなどから「営業」へ移行している。彼らの顧客は自己運用の生命保険、年金保険、地方銀行に加え、リテール向け商品を卸すための金融機関(銀行や証券会社)であり、当該機関投資家向けの営業マンの人材の引き合いが強い。
    5. リテールと富裕層向け資産管理ビジネス:個人の眠れる金融資産の掘り起こしに外資系・日系金融機関が競い合っているので、当該ポジションの人材需要は強含みである。
    6. コンプライアンス、バックオフィス:コンプライアンスは、常に人材需要があるが、対象者が限られているので実際のdealは少ない。バックオフィス・ポジションは、業績悪化で人材需要が落ち込んでいる。せいぜい退職者補充程度。
  6. 現状評価と今後の展望

    1.ウォール街 金融高度化で「膨張」 リスク制御、日本にも教訓
    ウォール街が成功体験と潜在的なリスクの間で身構えている。実体経済をはるかに超えて金融ビジネスが深化し、仕組みも精巧になっているからだ。
    「将来がリスクのごく小さな世界になったというのだろうか」。ニューヨークのシティグループ本社でロバート・ルービン経営執行委員会会長(元米財務長官)は、そうではあるまいと言いたげに小首をかしげた。
    プライベートエクイティ(未公開株)は空前のブームにあり、昨年夏までは米国株も最高値圏。
    社債などと米国債の利回り格差であるリスクプレミアムは、縮小している。リスクに目をつむった投資の拡大は「カネがあふれているおかげ」という。
    みずほコーポレート銀行の推計のよると、世界の金融資産総額は140兆ドル。円換算で約1京7千兆円と「京」の単位に膨らんだ。その金額は世界の国内総生産(GDP)の3倍強にのぼる。
    ヘッジファンドの運用資産は1兆4千億ドルに拡大。プライベートエクイティ投資、融資先の破綻リスクを取引するクレジット・デリバティブと並んで金融の三位一体となっている。
    もはや大手米銀のビジネスの柱は単なる融資ではない。証券会社も株式や債券を販売するだけの存在ではない。ファンドと一緒に投資案件を発掘し、自らも資金を供給して収益を追求するビジネスがウォール街の主流だ。
    典型がゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、シティなど。イングランド銀行が「巨大複合金融機関」と呼ぶ米欧の大手16社の総資産は昨年末現在で22兆5千億ドル。米国とユーロ圏のGDP合計額に匹敵する。「ミタルとアルセロールの合併など、2006年の大型M&Aの上位10件のうち6件に関与し、金額ベースではトップだ」。米法律事務所、スキャデン・アープスでは、パートナーの弁護士たちが案件を次々と披露する姿は、投資銀行と見まがうほど。法律ビジネスも金融機関との世界的なネットワークを収益の源泉にしている。
    「進化する金融技術でビジネスを一層拡げられる」とウォール街は自信を示す。だが、高度化の限界に挑む金融界を、コロンビア大学のリチャード・クラリダ教授は「成層圏を飛ぶジャンボ機」と評する。あまりに複雑な装置に障害が起きた際に何が起こるのか、「未体験」という意味。
    米長期金利が5%台に乗せ、ウォール街の宴を支えてきた低金利という条件は変化している。ポーロソン米財務長官らは「低すぎた市場金利の正常化の過程」と見て、金利上昇を容認する構えだ。マネーは膨らみすぎたと当局は考え、金利コストの面で制御しようと考えているようだ。
    ルービン氏は「流動性を左右するのは多分に市場参加者の心理」と指摘。自身の財務長官時代に直面した「1998年の世界金融危機の経験を踏まえ、いったんリスク回避の姿勢が強まれば、流動性も一気にしぼみかねないと見てのことだ。
    日本が足踏みした10年間余り、彼我の金融力の差は開いてしまった、巻き返しを狙う日本勢が飛び込もうとしているのは、ウォール街も身構える舞台だ。単なる掛け声でない本物のリスク管理体制こそが日本の金融機関の使命を制する。

    2.視界不良の大手銀行、損失懸念なお。欧米勢を追撃、力不足
    大手銀行6グループの08年3月期は2期連続の減益決算だった。本業の不振に加え、米国のサブプライムローン問題ものしかかった。3大メガバンクをはじめとする大手銀行の復活は視界不良だ。今後のサブプライム損失は限られる、と決算発表に臨んだメガバンクのトップは自信なさげだった。6グループが計上した損失は当初予想をはるかに上回り、1兆円近くに膨らんだ。
    邦銀は今回の決算でサブプライム証券化商品の代表格である債務担保証券(CDO)の損失拡大への備えはできたと説明している。だが、欧米市場での心配の種はそれに留まらない。LBOや米政府機関債も損失予備軍と言われている。
    4月に米ゴールドマン・サックスはドイツのボートメーカー向けLBO融資を額面の65%程度で売った。棄損率35%は市場予想を大きく超え、国際金融界は揺れた。
    LBO融資は取引が細り、売ろうとしたら価格は下がる。みずほフィナンシャル・グループが今回、LBO融資に積んだ売却損失引当金率は6.3%。ゴールドマンの価格がそのまま当てはまるわけではないが、売却予定額は8千億円もあり、火種は残る。
    各行は市場混乱の影響を受けた外貨建て証券化商品の状況を開示した。しかし、みずほと三菱UFJフィナンシャル・グループは米政府機関債の保有額を決算説明資料に盛り込まなかった。
    米政府機関債の大半は優良に区分された住宅融資担保の証券化商品。保有額はみずほが1兆円強。三菱UFJが3兆3千億円と巨額だ。評価損は出ていないとはいえ、一部は格下げの恐れがある。損失増の可能性はあるものの、邦銀は欧米勢よりサブプライムの影響が軽い。三菱UFJでは「欧米勢は資産を伸ばし難く、いろんな話が増えている」と話す。
    4月に邦銀の国際部門で驚きの声があがった。1−3月期の国際融資ランキング上位10社にメガバンク3行が入った。揃って入るのは久しくなかったことで、邦銀にとっては周回遅れを取り戻す好機だ。
    それとは対照的に収益性の高いM&Aの助言業務や株式、債券の主幹事業務のランキング上位には一行も入れないまま、邦銀の国際業務は海外の日系企業取引が柱で、グローバル企業の幅広い金融ニーズに応える体制派十分とはいえない。
    国内業務の収益性が低い邦銀に国際業務の拡大は欠かせない。ただ不良債権処理に追われている間に、国際業務は証券化やデリバティブで複雑になった。安易なリスク感覚で参入する危うさは、決算のたびに増えるサブプライム損失が物語る。
    欧米ではシティグループが非中核部門売却を打ち出すなど、筋肉質な経営体質づくりが始まっている。邦銀は不良債権、消費者金融、サブプライムと痛手を被ったが総花的な経営を続けている。リスク管理を強化した上でのりすくが取れる体制作り、競争力のある部門への経営資源の集中配分など、これまでの失敗を踏まえたビジネスモデルの転換が欠かせない。

    3.我が国10年に一度のチャンスが巡ってくるか
    米住宅ローン問題に端を発した金融不安はいったん小康状態に入ったとはいえ、推計百兆円の損失処理はまだ3合目。中古住宅価格がもう2割下がると、ローンで買った住宅の資産価値がローン総額を下回り、担保割れリスクが広がるとの試算もある。再び不安が症状を覆う可能性は大いにあるが、留意すべきは、今回の病巣は日本ではなく米国にある点だ。1990年代以降、大きく水をあけられた米国との差を埋める千載一遇のチャンスでもある。
    米国は同時テロ以降、移民の扱いにも神経質で、アジアから流入した優秀な頭脳が本国に戻る現象が起きているという。我が国が米国をライバル視するのはおこがましいが、全てに圧倒的だった米国が足踏みしている今こそ、我が国が何をすべきかを考える好機だ。
    第一には、1500兆円の個人金融資産を活かすことだ。世界の市場を席捲する新興国の政府系ファンドは推計300兆円。日本の個人マネーはその5倍だ。投資対象をきちんと選別できれば、経済を活性化し巨大な投資リターンを生む。年1%の投資収益は国内総生産の3%分に当たる。
    もう一つは米欧金融機関への出資や買収だ。米欧勢がこの先も資本不足に直面するのは間違いない。この機を逃せば日本が米欧金融市場の「正会員」になるチャンスは巡ってこないかもしれない。海外の人材を引き寄せる方策も大切だ。米国並みは到底無理でも、戦略分野に限って人材を大胆に受け入れてはどうか。
    だが現実はお寒い。足元で定期預金が増えている。金利が少し上がったことで安住に逃げ込む人が増えているためだ。電子部品や環境関連などで高い競争力を持つ日本企業は沢山あるのに、肝心の日本人の投資は盛り上がらない。リスク回避志向と仲介役の金融機関の非力が日本の活力をそいでいる。
    労働政策研究機構の最近の調査によれば、成人勤労者の約9割が終身雇用を、7割が年功賃金を支持し、「自由に競争できる社会」(31%)より「貧富の差がない平等な社会」(43%)が望ましいとした。内向き志向は投資の世界だけではない。このままではもう10年待っても未来は開けない。

    4.米証券化バブル崩壊で行き詰る投資銀行
    米証券化バブル崩壊後の信用収縮は最悪期を脱したとの見方が広がる一方で、米住宅価格の下落は止まらず、米不動産・商用ローン証券化市場では価格形成もままならない。し尿バブルの崩壊で、ビジネスの縮小を迫られる米金融・証券界の先行きは引き続き暗雲が立ち込めている。
    バーナンキFRB議長は4月中旬「流動性供給対策により金融市場は幾分回復してきた」としてものの「多くの証券化市場は依然として瀕死状態のままだ」と述べ「究極的には市場参加者自らがレベレッジを外し、資本を増強し、リスク管理を徹底して、金融市場の緊張の源泉を根本的に解決すべきだが、これには時間が掛かるだろう」との見解を明らかにした。
    だが、証券化市場を介して無限大とも言われる信用バブルをつくった欧米証券会社のレベレッジ外しは、一朝一夕にはいかないだろう。

    投資銀行のビジネスモデルの破綻
    「米住宅ローン証券化を巡る一連の問題の本質は、米証券会社(投資銀行)が絡んだ証券化商品という名の一種の道を踏み外した融資。その商品化手法が時間を経るにしたがって、極端に悪質になって言ったことが表面化したわけで、証券化ビジネスを含む欧米投資銀行のビジネスモデルの行き詰まりを表している。
    証券化ビジネスは、間接金融から直接金融への変遷、つまりBuy and HoldからOrigination and Distributionモデルへの転換のなかで拡大した。
    企業は資金調達の際に、伝統的には銀行借入に依存してきたが、証券会社(投資銀行)は、企業が債券発行によって投資家から資金を集める直接金融の世界に企業を引き込んだ。投資銀行は債券の引受・募集・販売で手数料収入を得るフィー・ビジネスに収益の軸足を移した。
    証券化は銀行借入で審査で融資対象外となるような信用力の低い企業にも資金調達の道を開いた。80年代後半からは、信用力の低い個人にまで資金調達の道を開いたことが、今回のサブプライム問題の始まりだ。
    「貸してはいけない人に貸す」という一線を越える行動に出た投資銀行は、このビジネスのよって投資家(顧客)サイドに生じたリスクを、格付けや債務保証等の仕組みで補うと同時に、様々な証券化手法を駆使して意図的にリスクを覆い隠したことは、今となっては公然の事実だ。
    「アメリカ型資本主義の究極目標は株主利益の最大化。投資銀行のフィー・ビジネスは資本を食わないので、資本の効率化、株主利益の最大化に貢献した」とはいうものの「金融業は本来的に虚業的な要素を有するがゆえに、越えてはならない一線があるはず」との指摘もある。悪質なリスク隠蔽により、投資銀行の信用は失墜した。このことは今後のビジネスにも影響を及ぼすだろう。

    信用膨張とクレジット・デリバティブ
    今回の危機がなかなか収束の兆しを見せないのは、無限の信用創造が生んだ巨大なポジションオ塊が市場に横たわっているからだ。
    「この金融危機が一過性ではなく、しかも損失規模がきわめて大きい原因は、RMBS(住宅ローン担保証券)からABCP(資産担保コマーシャル・ペーパー)までの相互関連の複雑性にある」との指摘もある。
    危機の入り口には、サブプライムローンを担保とするRMBSを組み込んだABS―CDO(資産担保証券を担保にしたCDO)があり、そのCDOを含んだSIV(ストラクチャード・インベストメント・ビークル)があり、そのSIVが資金調達に発行したABCP(資産担保CP)に対する投資家の資金の引き揚げが、危機の直接のトリガーとなった。
    1998年のLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)危機の折には、顧客の資金引き揚げに対して、ヘッジファンドは金融商品を投げ売りしてキャッシュを捻出したが、今回はそう簡単には行きそうにない。
    その理由は、クレジット・デリバティブ市場の発達と、単体でも複雑なCDOの派生商品等の登場だ。「CDOはデリバティブと融合することにより、爆発的に増加した」と指摘する。
    2003年7月以降CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のインデックスが統合されCDX、iTraxxとして流動性と取引量が拡大。CDOやSIVのヘッジに利用できるため、それらの商品への投資規模が拡大した。同時にインデックスを原資産とするデリバティブが登場し、CDS契約を内包したシンセティックCDOも普及した。
    証券化の世界では、借りるために発行した債券(一次証券化商品)の一部を使って、2次証券化商品を組成・発行して、また資金を調達するという「また借りの原理」 が前提となっているが、採算が組成当初より悪化した既存のCDOをリパッケージ(再証券化)して、より高い格付けと高利回りのCDOスクエアの発行も拡大した。
    「CDSなどのクレジット・デリバティブの技術は、信用リスクの移転を容易にし、ディールのスピードを上げることを可能にした。つまり回転数が上昇することとなり、従来の信用乗数では計測できない信用膨張が発生している」という。
    この結果、不動産バブルがはじけた時点で、時価評価不可能な巨額の資産を欧米証券・銀行や世界の投資家は持つことになった。ゴールドマン・サックスなど米大手証券4社が保有する時価開示が困難な資産の合計は2月末に2994億ドル(約31兆円)。保有額は3カ月で28%増えている。
    他方、アセット圧縮を急ぐ米銀の融資態度は厳格化している。4月の銀行上級貸出担当者調査によると、米国内の銀行は、過去3カ月間で企業・個人向けの貸出条件を厳格化した。危機は既に米経済の心臓部である個人消費の低迷がそれを物語っている。

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