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金融人材転職市場2004

T.概観

欧米金融機関は金融ビジネス高度化の進展を体現して過去十数年にわたり、デリバティブ、資産運用、証券化、リスク関連など高度な金融商品を次々と生み出してきた。一方わが国の金融機関は規制緩和や不良債権処理の遅れにより市場でポジションを確保することができずわが国金融市場は欧米金融機関の独壇場であった。邦銀の有能な若手はこぞって外資へ流れ高額を稼ぐプレーヤーが輩出した。しかしながら90年代後半金融市場の変化によってデリバティブの収益力が急減したのに伴い彼らも表舞台から退場せざるを得なくなった。代わって資産運用ビジネスが台頭してきた。金融バブルに踊って外資系金融人材市場も人材バブルを謳歌しそしてその破裂とともに厚底の求人状況も終息した。ここへきて市場環境の変化に伴い新たな金融ビジネスが勃興してきた。「企業再生」と「市場型間接金融」である。今春以降、米国及びわが国経済の回復基調を受けて金融市場も活性化してきたことに伴い人材需要にもやや明るい兆しが見えている。

U.企業再生ビジネス

内外金融機関は日本経済回復の桎梏となっている不良債権処理について如何なる方策でこれと取り組むのか。そこに新しいビジネスモデル構築の商機が潜んでいる。ディストレス・ビジネス、企業・事業再生ビジネス、プライベート・エクイティ、そして不動産ファンドの4テーマに分けられる。
当該新興金融ビジネスに対する人材需要はあるが歴史が新しいためにポジションスペックに該当する適格者は少ない。

U-1.ディストレス・ビジネス

97年頃から米系大手投資銀行や投資ファンドがディストレス・ビジネスで利益を挙げていた。邦銀から安値で買い叩いて購入しそれを転売するか回収会社に廻して収益を得る。大手外銀は専門プロチームを編成して破綻物件について総合力を駆使してディストレス処理、証券化、M&Aなどに分割してそれぞれ収益モデルを作り上げる。現在でも一部当該ビジネスへの人材需要がある。

U-2.企業・事業再生ビジネス

2002年中頃からディストレス・ビジネスは付加価値再生型へ移行してきた。
  1. 外資系金融機関は邦銀の問題先債権を再生ビジネスの商機と見ている。ディストレス・ビジネスの再生ビジネスへの看板塗り替えである。再生ビジネスはまずソーシングから始まる。再生見込みがありかつ安値で買える物件を見つけてくる目が必要だ。ソーシングの相手先は問題債権を抱える邦銀、直接問題ありの事業法人である。そこで金融外資はメガバンクにアプローチし親密な関係を築いて対象案件を手に入れようとする。そのために外資は金融機関向けマーケティング・チームを強化しようとする。ここで求められるのはソーシング対象を嗅ぎ分けるプロの目利きであり財務リストラのスキーム作りやデューディリジェンスのノウハウに加えて債務者との折衝や債権者間の調整力をもつプロである。実際適格なキャリアを有するプロは少ない。
    買取後の再生処理は各社の戦略により異なる。回収会社に廻して回収に励む、デットエクイティ・スワップや債権放棄の財務リストラを行う、証券化して転売、専門業者とのタイアップで事業再生する、M&A、不動産投資、ハイイールドやノンリコース・ローンのデット処理、DIPなどファイナンス、SPCでの事業再生など多岐にわたる。当該業務は高度なノウハウと経験を必要とする。適格者は少ない。

  2. 外資系投資ファンドは巨大な自己資金を背景に有利な展開をしている。投資銀行では短期的な収益確保が求められるのに対して投資ファンドは長期的に行動できる。これら通称ハゲタカファンドは不良債権処理に大きく貢献している。彼らは表向き再生ファンドとの看板を掲げているが実際のところディストレスである。儲かるからである。最近は日本の大手証券会社も再生ビジネスに大きく参加している。社内に専門部署を組織し案件発掘を競っている。また国内投資ファンドも活発にめぼしい案件に対してM&Aなど活発に投資している。当該職務への人材需要も盛んだ。しかしその道のプロを探すのはなかなか困難だ。国内資本系による事業再生ビジネス成功の見通しは厳しい。そのノウハウをもった人材がいないからだ。結局問題案件の回収か転売で終わるだろう。

U-3.プライベート・エクイティ(PE)

  1. 企業再生においてプライベートエクイティ(PE)はディストレスや再生ビジネスの案件よりも健全なものを対象にする。しかしながらPEと再生案件との間に明確な境界線があるわけではない。投資哲学や投資方針の違いからきている。PEの種類は外資系PE,独立系PE,投資ファンド、プリンシパル・インベストメントがある。大手外資のマネージング・ディレクターが独立して投資ファンドを運用するケースが目立つ。

  2. 外資系PEの投資行動はなかなか拡大していない。その理由の一つは投資ハードルが高すぎて実際20〜30%のリターン、投資額が100億円以上をクリアーすることが必要だ。日本では不振事業部門は売りに出されるが良質の事業は手許に置いておく傾向があり選択と集中の徹底がなされていないのが大勢である。
    一方独立系PEは問題企業・事業やベンチャー企業にフレキシブルに対応している。両者スタンスの置き方の違いだ。

  3. 人材需要と候補者の要件:
    まずソーシング、すなわち目利きのプロの需要がある。ソーシング担当のシニア・バンカー、すなわち事業法人とのトップとの人脈を有するバンカーが求められる。スペックは、M&Aだけでなくディストレス、再生まで入口から出口までの統括できる人材でなければならない。当該業務全般をカバーする適格者は極めて少ない。
    中堅・若手への人材需要は、投資やエグゼキューション担当である。ソーシング、投資、出口でのマネージング・ディレクターへのサポート業務である。スキルはM&Aと同様で、資本コストの計算、デューディリジェンス、キャッシュフローの計算、会計法律知識などが求められる。日本ではPEの歴史が浅いため経験者が少ない。面接ではPE未経験者が対象になるが彼らがPEプロとして活躍できるのは皆無に近い。

U-4.不動産投資ファンドの拡大

90年代半ば以降米国方式の不動産投資ファンドが登場、これは不動産ビジネスと証券化や再生支援といった金融との融合である。J-REITもある程度賑わいを見せてきた。このような背景をもった不動産ビジネスはさらに拡大していくだろう。当該ビジネスへの人材ニーズも盛んだがスペックは不動産屋さんではなく金融出身者で不動産ビジネス経験を要する。そうすると自ずと適材は少ない。

V.クレジット・リスク・ビジネス

V-1

日本経済が長く低迷するに至った不良債権を生み出した銀行のオーバー・バンキング(間接金融シフト)を解消し直接金融への転換を探っているがそこへの構造変革はなかなか進展しない。そこで現時点では両者の中間に位置する仕組みとして市場型間接金融の拡大が求められている。すなわち、証券化、ローン・トレーディング、クレジット・デリバティブ、クレジット・リサーチ等のクレジット・リスク・ビジネスである。

V-2.クレジット・リスク・ビジネス拡大を阻んでいる要因

邦銀が貸出債権を市場に放出しないために証券化(CLO)やローン・トレーディングのシーズが出てこない。日本ではそもそもクレジットマーケットが成立する合理性に乏しい。不合理な政府介入や株式持合いがそれを阻んでいる。国際市場では拡大しているがわが国では縮小気味。当該人材のニーズは小さい。あってもグローバルなプレーを要求され、またドキュメンテーションは高度な英語力が必要なので日本人のプロはいない。クレジット・アナリストの採用も難しい。クレジットの時価評価は日本では新しい。時価の発想がそもそもない。担保による与信しかできない。多くの外資系金融機関が当該ポジション採用を試みたが適格者が極めて少なく結局当該ビジネスのプロを雇うのは難しく若手を育てる方向で動いている。

V-3.証券化ビジネスの人材需要

  1. ABSの市場規模は依然拡大中。特にCDOや住宅ローン債権の証券化が伸びた。証券化の職務はオリジネーター・マーケティング、ストラクチャリング、プレースメントに大別される。「オリジネーター・マーケティング」とは、可能性のある企業や金融機関に対して証券化のソーシング活動を行う。候補者はクライアント・ベース経験を要する。
    「ストラクチャリング」とは、ドキュメンテーション、オリジネーターとの折衝、格付会社・会計事務所・弁護士事務所等との折衝、海外本店の認可取得等、証券化を完結させるための各種業務を行う。
    「プレースメント」とは、証券化商品の販売を指す。全般的には証券化はまだ人材需要がある。プロからジュニア・レベル、アシスタントまでである。しかしながら証券化ビジネスは膨大な労働力投下に対してあまり儲からなくなってきたので極端に人員を絞り込んだところもある。

  2. 収益性が高いと言われてきた消費者ローンもいまや一部の外資系が力を入れているだけであり今までのような人材需要は終息した。したがって証券化のプロたちは新しい資産やビジネスを模索している。またCMBSの拡大が期待されているが当該ポジションの採用は非常に難しい。CMBSプロジェクトでは当該事業リスクの分析を要するため対象事業の経験者による傘下が必須であるが適任者を見つけるのが非常に困難だからだ。またプロジェクト推進には多数の権利者缶の調整が必要だがその調整が真に難しい。それがCMBSの拡大を阻んでいる。

  3. 証券化商品のプレースメントに対する人材需要がある。主要金融法人や地域金融機関向け証券化商品の販売である。当該人材需要の見通しは証券化市場の今後の量的な拡大如何である。

W.投資銀行ビジネス

W-1.今春までの日本の株価低迷と外資金融機関の本国での業績不振により東京支店の投資銀行部門(株式引受とM&A)は大幅なリストラを行った。春以降の日本市場の回復の兆し及び外資本国での業績回復により一部求人に明るさが見え始めている。外資系金融機関東京支店のオペレーションは東京市場の盛衰と連動して動く短期収益主導主義が貫かれている。

W-2.M&Aビジネスは増加傾向を辿り今年の入ってからも活況である。中心は破綻・企業再生や大企業の事業分離に伴う案件である。国内の銀行・証券、ファンド、コンサルティング主体のM&Aである。いずれも人材需要が盛んだが、採用基準は厳しい。
外資系で上手くいっているのは一部だけで全体は不振だ。短期売上を追求したM&A案件基準のバーが高いため対象案件が少ない。彼らは財務アドバイザリーよりフィー狙いのためM&A後に企業価値が下がるケースも多い。

W-3.人材需要の中心は若手である。スペックは単なる資本コストの計算でなく、企業価値がアップするシナリオを描けるかである。邦銀から外資系M&Aへの転職希望者は、単に邦銀で数年M&Aを経験しただけでは不十分で、M&Aビジネスの性質から幅広い横断的な業務経験が求められる。当該適格者は邦銀では殆どいない。彼らは外資系では通用しない。

X.マーケット・リスク・ビジネス

X-1.デリバティブ

一部のトップクラスの外資系投資銀行は事業法人向けデリバティブで大きな収益を稼いでいる。大手邦銀もこのデリバティブに追随している。

X-2.トレーディング

株式市場の長期低迷により為替、デリバティブ、JGBのトレーダーの人材需要は極端に減った。外資では日本人トレーダーが軒並みリストラされた。東京支店のトレーディング・ルームの収益の落ち込みは最近まで惨憺たるものであった。

X-3.株式

外資では日本株から撤退したところが多く日本株のプロが大量にリストラされた。証券アナリストも市場の現状とインサイダー問題もあって大量に退職を迫られている。彼らの受け皿は殆どない。

Y.資産運用ビジネス

Y-1.運用会社

登録投資一任運用会社は121社(うち投信の兼営は66社)ある。役職員数は全体で7796人(うち投資顧問部門4455人)で前年比若干の減少。内訳は、運用フロント2490人(ファンドマネジャー/ポートフォリオマネジャー/アナリスト/トレーダー)でこれも前年比若干の減少。営業部門は1300人で同様に若干の減少。一方、コンプライアンスは317人で若干増加している。運用成績が悪かった割には大きく減っていないが、減少の要因はパフォーマンス悪化によるリストラやアクティブ運用からパッシブ運用への変換に伴う人員減少である。フロント需要はクウォンツ・アクティブのファンドマネジャー、外国投信のマーケター、ヘッジファンドのマーケター、年金コンサルタントである。

Y-2.投資信託

人材需給はパフォーマンスの悪化から国内大手運用主要ファンドの殆どの運用責任者が交代した。中規模の運用会社では日本株のボトムアップ型運用でファンドマネジャーのアナリスト兼務が進んでいる。

Y-3.投資顧問

年金制度ソリューション・ビジネスが盛況である。これは報酬制度・年金制度・退職金制度などの見直しに伴うもので、年金アクチュアリーの資格者が生保・信託銀行からコンサルティング系へ転職した。

Y-4.オルターナティブ投資

日本の機関投資家がオルターナティブ投資を増やした。中心はヘッジファンド投資である。大手生保や信託銀行がプロの採用を試みたが、一流のプロは移らなかった。日本の金融機関の採用条件が中途半端だったからだ。

Y-5.リテール営業

膨大な個人金融資産の獲得を狙って外資系金融機関が手がけたが、結局実らなかった。アドバイザーテックは日興コーディアル証券へ吸収、メリルリンチ日本証券のリテールも大幅縮小、モルガンスタンレーのリテールも上陸失敗。これらは短期間で収益をあげるビジネスモデルが根付かなかったことに起因する。しかし土台そんなことは無理だった。外資の短期収益実績主義がここでも見て取れる。日本の個人投資家も新しいコンセプトのFinancial Consultingに対して保守的だった。

Z.外資系と日系金融機関の行動基準

外資系:

長らく続いたわが国金融市場の低迷により外資系金融機関の収益構造が崩れた結果、昨年度は大幅なリストラ、人員削減を行った。対象は日本株、為替、株式調査、M&A、引受、資産運用、個人営業、一部のディストレスや証券化である。大手もフルライン型ビジネスモデルを放棄して、ディストレス・ビジネスなどに経営資源を選択・集中している。今春以降世界経済の景気回復の胎動を受けて雇用動向は若干改善されてきた。しかしながら外資系が短期収益至上主義を貫徹していることから現段階は日本市場にフルコミットメントするまでに至っていない。人材需要もまだ本格的に回復する兆候は見られない。今後も一層の厳選主義が貫かれるだろう。

日系:

政府主導で金融機関の不良債権処理を強制的に進捗させたことよりここにきてようやく収益構造が固まってきた。しかしながらそこには相変わらず「革新なき経営、リスクを執らない、当事者意識希薄、責任を負わない、問題先送り」の体制が温存されている。漸進志向から抜け出せない。グローバル・コンペティションで欧米に比して周回遅れの国内系は時間切れに終わるのか。既得権を守旧しようとする現経営者層と20代、30代、40代前半までの若手・中堅層との世代間闘争で時間切れの前に次世代が主導権を握ることができるか、彼らがそれに勝利して時代に即応した価値観、収益モデルを構築することこそが日系金融機関復活へのKey for Successである。
彼らが組織に埋没せず個人としてのオリジナルな思考を持ち行動することを通じてキャリア選択肢は多様な拡がりを見せるだろう。

[.求める人物像

  • グローバル企業の多様な人種、文化、価値観からなる組織の中で活躍できる自信のある人
  • リーダーシップ、マネジメント・スキル、及び英語に堪能な人
  • 常に高い目標を持ち続ける向上心のある人
  • 独立心が強く、常に前向きな姿勢で物事に取り組み、自分の仕事にコミットできる人
  • 創造性及び革新性を持ちながら、自分のビジョンや考え方をもっている人
  • 個人プレーよりもチームの一員として物事を考え、解決策を見出せる人
  • クライアントのニーズを的確に把握し、柔軟に対応、問題解決できる人
  • これまでのキャリアを通して実績を証明できる人
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